『くしゃみおじさん』(オルガ・カブラル)

主人公は、ある家の裏庭に住むうさぎとねこといぬ。うさぎは白くて長い耳、ねこは黒くて小さい耳、いぬは大きな声を自慢にしていました、ところが、通りかかった廃品回収業のおじさんがすさまじいくしゃみをすると、ねこの頭に白い耳、うさぎの頭に黒い耳がつき、さらにねこといぬの声が入れ替わってしまいます。3匹は元に戻してもらうために、おじさんを捜索します。
3匹が道で出会う動物や人間におじさんの行方を尋ねると、相手もおじさんのくしゃみにやられていたという展開が続きます。幼年童話でおなじみの繰り返しの手法がうまくはまっています。みんな同じ被害者なので話が早く、くしゃみ被害者友の会の愉快なパーティーが結成されます。
迫力ある不思議なくしゃみの楽しさを高めるのは、山村浩二のイラストです。くしゃみに乗って空を舞ういぬねこうさぎがちょうおんどりのゆるい表情の笑えること。また、くしゃみの擬音のデザインも、楽しさを増幅させています。
しかし、現在はソーシャルディスタンスの時代になっているので、他人に直にくしゃみをあびせるという前提の受け入れがたさが発表時(1948年)よりはね上がっています。ここが幼い読者にどう受け止められるのか、気になるところです。