『お江戸豆吉 2 のろいまんじゅう』(桐生環)

第2回フレーベル館ものがたり新人賞優秀賞受賞作「お江戸豆吉」シリーズの第2弾。菓子屋の旦那様から勘当のように追い出された若旦那とふたりで新しい菓子屋を切り盛りする菓子職人見習いの少年豆吉の物語です。けんか餅が評判になったこともあり若旦那の店は軌道に乗りはじめ、正式な店名はまだ決まっていないものの『若旦那んとこ』と呼ばれてご近所から親しまれていました。そんななか、若旦那のまんじゅうを見て「のろいのまんじゅうだあ!」とおびえる男が現れます。のろいのうわさが読売におもしろおかしく書かれたこともあり、店の評判は落ちて若旦那たちは窮地に立たされます。
一気に新キャラが3人も増えてにぎやかになります。騒動の発端となったのは、絵師見習いの留次郎という男で、おどおどしているようでマイペースな大物っぽいところもある人物です。彼の保護者役として登場したのが、一玄和尚。若旦那とタメを張れるほどの長身イケメンで、しかも若旦那とは大違いの穏やかな物腰の紳士です。ところが、それは取り繕ったもので地は若旦那系の性格でした。きれいなものには毒があるという二面性はみんな好きですから、一玄和尚は特に人気が出そうです。もうひとり、いたずら者の小僧栄祥も、場を和ませてくれます。前巻同様、主要キャラに本質的な悪人はいないので、いやな感じの事件は起きても作中の空気は爽快です。
今回若旦那たちに訪れた試練は、無責任な流言との戦いというやっかいなものでした。そこへの対抗手段は、必然的に搦め手となります。本質は演技者である宗教者が主役となり、うわさという虚構に対抗する別の虚構をぶつけるという、狡猾な戦法がとられます。
のろいや本所七不思議の絡むミステリー風味があるのが、第2巻の大きな特色です。のろいの真相はミステリファアンが好みそうなネタだったので、小学生の読者の記憶にも残りそうです。