『レッツ キャンプ』(いとうみく)

小学4年生の晴斗は大介くんとふたりきりでキャンプに来ていました。大介くんはお母さんが働いている美容院の同僚で、晴斗の新しいお父さんになったばかりの人。大介くんは晴斗との距離を詰めようとはりきりますが、すべて空回り。同じキャンプ場にきているもうひと組の親子は手際がいいのに、大介くんは失敗ばかりしてしまいます。晴斗はうんざりしていく一方です。
以前の晴斗は、母親の友だちのちょっとおもしろいお兄さんとして大介くんと親しくしていました。しかし子どもの目はシビアなもので、父親になるとなると、実務能力を厳しく審査してきます。父親の能力は自分の生存と関わってきますから、厳しくなるのは当然です。中盤まではしんどいギスギス感を存分に味わわせてくれます。
そこで突破口になるのは、旅先での出会いです。二度と会うことがないからこそ深刻な悩みを打ち明けることができるというのが救いになるというドライさがおもしろいです。
新しい家族の出発の物語としてなかなかの作品でした。