『ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女』(アンシア・シモンズ)


あの木地雅映子が、『氷の海のガレオン』の主人公杉子という「少女」を生み出した木地雅映子が「純度の高い「少女」を摂取した」という賛辞を送っていること。この意味を理解できた人々は、このツイートを見て秒で本屋に走った(もしくはネット書店に注文した)ことでしょう。幼いときに雷に打たれて生き延びたため稲妻(ライトニング)メアリの異名を持つ化石発掘家の女性メアリ・アニングの人生を元にした児童文学です。
約200年前に身分の低い女性として生まれたことから、イクチオサウルスの発見などの大きな学術的成果をあげても手柄は身分の高い男性に奪われてしまうという不遇の人生を送りました。しかしどんなに不遇でも、自らが科学者であることに矜持を持っているメアリは、強烈なパーソナリティーで我が道を進みます。この「少女」性がこの作品の一番のみどころです。
なにしろメアリは、自分以外のほぼすべての人間を「ばか」だと思っているので、独立独歩で生きるしかないのです。尊敬する父がけがで死にかけていても入手したばかりのウナギの頭蓋骨を見せることばかり考えているメアリ。ドレスを着せられても「この頭と顔は、他のどんな目的のためにあるというの? 飾りじゃないことは確かだ。脳みそを入れておく容れ物だ。それ以上でも、それ以下でもない」と内心つぶやくメアリ。「純度の高い「少女」」的なエピソードを挙げていくときりがなくなります。
木地雅映子を信じて大正解でした。自由な魂のあり方を追求する「少女」性の輝かしさを存分に堪能させてくれる傑作でした。