『その一言から生まれる物語 ああ、もうダメだ!』(日本児童文学者協会/編)

「もうだめだ」という一言からは、どうしてもしまっちゃうおじさんのことを思いだしてしまいますよね。本の扉のイラストでもorzしていますし。この巻は、タムラフキコのイラストの迫力も印象に残ります。特におもしろかった作品をいくつか紹介します。

東野司「ゆうちゅうばあになるためのたったひとつの確かなやりかた」

「ゆうちゅうばあ」を目指す子どもの物語ですが、あえて「ゆうちゅうぶ」や「あいふぉん」をひらがなで表記して幼さを演出しているところにたくらみがあります。親は選べないという残酷な現実を見据えながら、「伝えたい」という願いに真摯に向きあっているところに好感が持てます。

古内一絵「北見くんはダメジョウブ」

主人公の母親は漫画家で、北見くんという青年を住み込みのアシスタントとして雇っています。親戚でもない若い男を家に入れていることを同級生の母親が問題視して、あろうことか衆人環視のなかで子どもを捕まえて問い詰める場面がホラーです。北見くんは世間的には「ダメ」側とされる人間ですが、自分のことを「ダイジョウブ」としています。「ダメで大丈夫な日々」の強度に救われます。