『カメレオンのレオン ないしょの五日間』(岡田淳)

獣人(?)たちが暮らす異世界と小学校がつながっているという『選ばなかった冒険』を連想させる設定の「カメレオンのレオン」シリーズの第3巻。
第1話の「ピョンの魔法」は、ふたごのウサギの手品師の手品をめぐる物語。一方のウサギがもう一方のウサギを指さして「ピョン」と唱えると指さされたウサギが空高く飛び上がって次は役割を交代したり観客を参加させたりという手品が実はガチの魔法で、それが小学校の方に流出してしまうという騒動が起こります。小学校の日常のなかに魔法がまぎれこんで一気に祝祭空間になるという「フングリコングリ」系統の物語です。しかし楽しさ一辺倒でオチもしゃれていた「フングリコングリ」に対し、「ピョンの魔法」は最後の最後に人間不信を混入してくるので、読後感は全く異なります。
第3話「ないしょの五日間」は、さらに児童文学的な闇を抱えた作品です。探偵のレオンは、ある夫婦から行方不明になった息子の捜索を依頼されます。息子はすぐに発見されたものの、どこか変な様子。実は息子はカメレオンで、カメレオンはうさんくさく思われがちなのでそのことを隠して育てていたのだと、父親は打ち明けます。家族が他人のように思えるカプグラ症候群のような不安に、差別問題が絡み、岡田淳の暗い側面が表出されてきます。