『くまのピエール』(イブ・スパング・オルセン)

デンマークのぬいぐるみ童話。ちょっと頑固で思いこみの激しいくまのピエールが巻き起こすほほえましい騒動が描かれます。
第1話は、おもちゃ屋で番犬代わりに置かれていたピエールがスティーヌという女の子に買われるまでのお話です。クレーン車のおもちゃの様子が変なことに気づいたピエールは、それを直そうとしたはずみで機関車のおもちゃのスイッチを起動させてしまい、それがきっかけでたくさんのおもちゃたちが暴走を始めてしまいます。そして騒ぎを聞きつけた警官隊が突入と、猛スピードで騒動が拡大していくさまが楽しいです。翌朝、店が荒らされた様子を見た店主はピエールは番犬役としては役に立たないと見切りをつけ、たった2クローネでスティーヌに投げ売りします。
夜のおもちゃ屋という魅力的な舞台から始まった物語ですが、これ以降はピエールとスティーヌの日々が描かれます。おもちゃ屋のなかしか知らなかったピエールにとっては、外の世界は初めて見るものばかりで、それに関するピエールの思いこみがおかしみを生み出します。月を見たら20クローネ硬貨だと思って追いかけたり、雪景色を初めて見て自分は全く知らない場所に連れ去られたのだと勘違いしたり、歩くと雪が足の下にくっついて竹馬状態になり、自分の背が急に成長したのだと思ったり。
ユーモアも奇想も適量で、安心して子どもに手渡せる作品です。