『給食アンサンブル2』(如月かずさ)

給食をテーマにした連作短編の第2弾。今回は、吹奏楽部周辺のエピソードが語られていきます。
第4話は、やる気のない吹奏楽部でひとりガチ勢をやっていて孤立している部長の話で、とても胃が痛くなります。第5話は、吹奏楽部内で調整役としてうまく立ち回っているように部長から思われていた副部長に主役が交代。こちらも自分が善人であることに屈託を抱えていて、また胃が痛くなります。
と、胃痛エピソードが続きますが、作品世界全体はあたたかいものに包みこまれています。この作品や『スペシャルQトなぼくら』、短編「プロジェクト・チュウニ」など最近の如月作品に顕著な特徴は、子どもに「成長」と呼ばれるような変化を無理に求めず、現状を肯定する姿勢をみせているところにあるように思われます。『給食アンサンブル2』第2話や「プロジェクト・チュウニ」ではまだ大人から白眼視される子どもの活動を全面的に応援し、『スペシャルQトなぼくら』では悪意との戦いの矢面に子どもを立たせず、『給食アンサンブル2』の吹奏楽部周りの子は、現在の自分がよきものを持っていることに気づかされます。
大人が子どもに「成長」を求める理由には、大人側の不安を解消するためという利己的な面もあります。そういった欲望に溺れずあるがままの子どもを受け入れようとする如月かずさの器の大きさは、シビアな作品が目立つYA界に救いを与えています。