『ぼくは勇者をたすけたい』(中松まるは)

現実で友だちができない「ぼく」は、オンラインゲームで知りあった勇者と友だちになります。男勇者は名前まで「勇者」にしているちょっと変わった感性の持ち主。「ぼく」は、少女神官として勇者を支えて冒険をしています。ところが、「ぼく」が学校でやらかした失敗を勇者が語っため、勇者が同級生であるらしいことが判明します。一方なにも知らない勇者は、「ぼく」のことを大人の女性だと思いこんでいます。「ぼく」は勇者の正体を探ろうとします。
この作品の特色は、バリアフリーな場としてオンラインゲームの世界を描いているところにあります。ぼっち体質の「ぼく」と、ある事情を抱えている勇者は、現実の学校では居心地の悪い思いをしていました。しかしゲームのなかではその障壁はなくなり、のびのびと活動することができるようになります。
ただし、「場」だけではなく「人」も重要です。「ぼく」と勇者は無課金でマイペースに冒険するタイプのプレイヤーだったので、課金しているガチ勢からは相手にされません。現実よりはバリアフリーなゲーム世界でも立場の弱いふたりですが、それゆえここで友愛が生まれた奇跡は輝きます。
それにしてもめばち先生のイラスト、ラストシーンの感動にバフかけすぎでは?