『七月の波をつかまえて』(ポール・モーシャー)

夏・海・女子ふたり。これ以上なにも説明はいりませんね。よって、以下は全く読む必要のない文章です。
12歳のジュイエは、七月のあいだ母親と海辺の町・カリフォルニア州サンタモニカのオーシャンパークで過ごすことになります。ジュイエは家族関係でいろいろ鬱屈を抱えていたので、これは人生最悪の監禁生活になるものと思っていました。母親はこの旅がジュイエを変えるきっかけになってほしいと願っていましたが、医師としての仕事が多忙なためあまりかまってやることができません。まったくいい予感のなかった旅の初日に、ジュイエは運命の出会いを果たします。アイスクリーム屋で出会ったウザいくらいにキレイなサーファーガールのサマーは、「"エイリアンの要求をムシ"に十時に集合」という謎のメッセージでジュイエを呼び出し、その後ふたりはいつも"エイリアンの要求をムシ"するようになります。
物語はジュイエ視点で語られるので、一見ジュイエがサマーに救われたようにみえます。しかしサマーのほうも事情を抱えていて、異邦人であるジュイエに悲痛な期待を抱いていました。だからサマーはジュイエの名前を奪い、「ベティ」と呼びます。そして、ホイップクリームのせいで(ホイップクリームのせいではない)大惨事が起こり、サマーは満たされます。
ジュイエ側からすれば、サマーのサーファーの文化が異文化です。クライマックスは異邦の宗教的儀式に立ちあってそれにとけこんだような、危うさをはらんだ荘厳さに圧倒されます。
夏の恋を描いた児童文学のマスターピースとして語り継がれる作品になりそうです。