2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『文通小説』(眞島めいり)

文通小説 (文学の扉)作者:眞島 めいり講談社Amazon描写力の高い作家には百合を書いてもらいたいと願うのは、人類の習性です。であるなら、ほとんどの人類は眞島めいりの百合児童文学を待望していたということになりますが、早くも夢は叶えられました。 中学2…

『ふたごチャレンジ! 5  ぜったいヒミツ!? 試練の冬休み』(七都にい)

ふたごチャレンジ!5 ぜったいヒミツ!?試練の冬休み (角川つばさ文庫)作者:七都 にいKADOKAWAAmazon4巻のラストで思いがけず両親と顔を合わせたかえでは、ジェンダーロールを守ってほしいという両親の願いに応えてとっさにあかねのふりをしてしまいます。両親…

『ひげよ、さらば 下』(上野瞭)

ひげよ、さらば (下)作者:上野瞭理論社Amazon おれは片目。 ヨゴロウザはおれが選んだ相棒だ。 「もう眠りの時間は終わりだぜ」出会いが引き寄せるのは理想か現実か…………。 ――さらば、猫たちの叙事詩よ (新装版下巻カバー袖より) カバー袖にこのセリフを引用…

『ひげよ、さらば 中』(上野瞭)

ひげよ、さらば (中)作者:上野瞭理論社Amazon伝説の猫BL児童文学『ひげよ、さらば』の三分冊新装版の中巻。古い作品なので、ネタばらしには配慮せず内容を振り返ります。未読の方はご了承お願いします。 三分冊になることで、作品の構造はみえやすくなります…

『おにのしょうがっこう』(山田マチ/作 岡本よしろう/絵)

おにのしょうがっこう作者:山田マチあかね書房Amazonふたごのおにのベニーとルリーはおにのしょうがっこうの新入生。読者はこのふたりと一緒におにのしょうがっこうの日常を体験します。 異文化の話なので、人間の学校と同じところ違うところを見ていくのが…

『地図と星座の少女』(キラン・ミルウッド・ハーグレイブ)

地図と星座の少女作者:キラン・ミルウッド・ハーグレイブ岩波書店Amazon北緯28度西経17度に位置する島、ジョヤ島が舞台。アドーリというよそから来た総督が支配するようになってから、島の生活は暗くなりました。主人公は地図職人の娘イサベラ。イサベラの同…

『ダッドリーくんの12のおはなし』(さく/フィリップ・レスナー  え/アーノルド・ローベル)

ダッドリーくんの12のおはなしアノニマ・スタジオAmazon1965年にアメリカで刊行された幼年童話。イラストは、「がまくんとかえるくん」シリーズで有名なアーノルド・ローベルです。これは三世代以上にわたって愛されるべき傑作で、いままで未邦訳だったと…

『ぼくたちは飛ぶ』(新冬二)

1975年、太平出版社刊。新冬二の短編集。不条理度の高い作品が多いので、古川タクのイラストがよくあっています。 表題作「ぼくたちは飛ぶ」は、自分にはつばさがあって飛ぶことができると主張するキミオくんをめぐる物語。物語の冒頭ではキミオくんの友だち…

『そんなのうそだ!』(ジーン・メリル)

そんなのうそだ!作者:ジーン・メリル,坂口 友佳子岩波書店Amazonみんなが額に汗して働いているのに、サルとブタとキツネの三人組はいつも茶店の縁側でくつろいでいました。そして、店に来る旅人にホラ話を聞かせて食べ物をおごってもらっていました。ある日…

『はなとりかえっこ』(角野栄子/さく さとうあや/え)

はなとりかえっこ作者:角野栄子偕成社Amazon「空が 青くって、お花が さいて、木の葉が ぴかぴか ひかる、うつくしい きせつ」、優しい童話文体で表現されるこの季節が地獄の季節であることは、周知の通りです。アラさんは「おばけが ぶらさがっている みた…

『今日、僕らの命が終わるまで』(アダム・シルヴェラ)

今日、僕らの命が終わるまで作者:アダム・シルヴェラ小学館集英社プロダクションAmazon「2021年アメリカでもっとも読まれたYA小説」という触れこみの作品です。夜の0時をまわるとその日に死ぬ運命の人に宣告の電話がかかってくる世界が舞台。死の宣告を受け…

『草の背中』(吉田道子)

草の背中作者:吉田 道子あすなろ書房Amazon咲の十一歳の誕生日に、祖母のこよみさんが「今度、わたしの十一歳のときの話をするね。話すにはちょっと勇気のいる話。さ・も・し・い・話」と謎のようなことをいってきました。しかし「今度」は訪れず、こよみさ…

『ひげよ、さらば 上』(上野瞭)

ひげよ、さらば (上)作者:上野瞭理論社Amazon ・シャム猫は神聖にして、常に敬愛されねばならぬ。 ・すべての猫は、健康で文化的に暮らす権利がある。およそナナツカマツカの丘にそのテリトリーを持つ猫は、それぞれのテリトリーを守る義務がある。 (「『猫…