『地図と星座の少女』(キラン・ミルウッド・ハーグレイブ)

北緯28度西経17度に位置する島、ジョヤ島が舞台。アドーリというよそから来た総督が支配するようになってから、島の生活は暗くなりました。主人公は地図職人の娘イサベラ。イサベラの同級生のカータが、総督の娘でイサベラの親友のループのために立入禁止区の果樹園にドラゴンフルーツを取りに行って、行方不明になります。やがてカータは死体で発見されました。責任を感じたループはイサベラに書き置きを残して殺人犯が潜んでいるといわれる危険な森にひとりで赴きます。カータが死んだときは外出禁止令を出すだけで犯人を捜そうとしなかった総督も今度はループの捜索隊を組んで自ら出立しようとします。イサベラも捜索隊にまぎれこみ、過酷な冒険の旅に乗り出します。
イサベラの生きる時代は、伝説の時代よりも自由がないようにみえます。昔のジョヤ島はひょうたん島のように海上を浮遊していて、島そのものが自由でした。また、アリンタという少女戦士が炎の魔物と戦ったという伝説も残っていました。現在は女性にそのような活躍は許されておらず、捜索隊にまぎれたイサベラは男性のふりをしていました。

「伝説は、おおむかしに本当にあったのに、みんなが現実じゃなかったって思おうとしていることだよ。」

物語の方向性はなかなか読めず思わぬ危機が連続するので、サスペンス性で読ませてくれます。苦難が続くなかで冒険の仲間の絆、特にイサベラとループふたりの少女の絆がどう深まっていくのかというのが読みどころです。