『おにのしょうがっこう』(山田マチ/作 岡本よしろう/絵)

ふたごのおにのベニーとルリーはおにのしょうがっこうの新入生。読者はこのふたりと一緒におにのしょうがっこうの日常を体験します。
異文化の話なので、人間の学校と同じところ違うところを見ていくのが肝要です。入学の日に新品の服(ぱんつ)やランドセルを装備して登校するところは同じですし、机に座って時間割に従って勉強するのも同じ、はたまた、状況によってはリモート授業が実施されるというところも同じで、親しみが持てます。
人間の小学校と大きく異なる点は、職業教育と直結しているところです。おにの就職先はじごく。職業選択の幅が狭いことは問題ですが、亡者の刑期を数えるためのさんすう、じごくの地理を学ぶせいかつの授業などはおににとっては実用性があり、学習のモチベーションは上がりそうです。人間の学校にはない「かなぼう」の授業も楽しそうです。
おに視点でのじごくの仕事は、凶悪な犯罪者相手の仕事ということになるので、人間とは全く異なる見方がなされるのがおもしろいです。子どもたちは「じごくには かならず おとなと いっしょに いきましょう」と先生から注意されますが、それは人間の亡者が危険だからです。
岡本よしろうによるじごくや観光地としてのおにがしまのギミックも目を引きます。ゆるく異文化について考えられる作品です。