『嘘吹きアンドロイド』(久米絵美里)

嘘吹きシリーズの第3弾。男男感情大爆発事件が起きた夏休みは明けましたが、二学期開始早々、理子と錯の元に鞠奈が厄介事を持ちこんできます。学年一の美少年の田中瑠卯がSNS上で自分はアンドロイドであるとカミングアウトしました。この件は学校内ではすぐに流されましたが、鞠奈は小説執筆のための取材という名目でルーに構うのをやめません。ルーがパンダマウスを飼い始めたので、それを見に行くことを口実に理子と鞠奈はルーの家に入りこむことに成功します。
人もロボット・AIも愛玩動物も同じ俎上に載せ、命や自我をめぐる観念バトルが繰り広げられます。この流れもすっかりおなじみになってきました。会話で「や」という否定から入る間投詞が多用され、読点が多く長くてまわりくどい文体も、作品の理屈っぽさにぴったりあっています。参考文献には弱いロボット関係の本が挙げられていますが、これをひとつの突破口にしているのも興味深いです。
観念論から現実的な問題が立ち上がってきたときに感情が爆発する流れも前作と同様で、終盤は一気に盛り上がります。
また、理子・錯・鞠奈の三者の関係のなかで理子の感情がだいぶ育ってきたことにも注目する必要があります。理子と錯、いつの間にこんなにラブラブになったのでしょうか。理子の最後のセリフなどは、「I love you」と同義であるように思われます。