『ふたごチャレンジ! 5  ぜったいヒミツ!? 試練の冬休み』(七都にい)

4巻のラストで思いがけず両親と顔を合わせたかえでは、ジェンダーロールを守ってほしいという両親の願いに応えてとっさにあかねのふりをしてしまいます。両親はしばらくおばあちゃんの家に泊まることになり、両親の前でお互いのふりを強いられたあかねとかえでにとって、楽しいはずの冬休みが針のむしろになります。
誕生日をきっかけに両親がジェンダーロールを押しつけてくるようになったので誕生日がふたりの個性の葬式になるという、第1巻の「悪夢のバースデー」は衝撃的でした。第5巻はその再来です。そこに現れたのは、流れを変えてくれるお助けキャラとしてすでに信頼感を得ている吉良くん。「だますっていうなら、覚悟を決めて、だましきれよ」というアドバイスを与えてくれました。
現実では、多数派の差別する権利を守るためのLGBT「差別」増進法が成立してしまいました。このような状況のなかで、わきまえず手段を選ばず戦う意思を明確にするこのような作品の役割の重要性は、残念なことに一層増してしまいました。ただし、ふたりにとって両親は敵ではなく、両親を慕う気持ちは確かにあります。両親を傷つけたり不安にさせたりすることは本意ではありません。そこで、4巻かけて緑田小で積み重ねてきたものが生きてきて、1巻とは全く異なる様相を呈します。
ふたりは大掃除を口実に、両親と過ごす時間を減らそうとします。ここは胃が痛いところですが、より時間を稼ぐために蔵の大掃除に手をつけたのがすばらしい発想でした。ここを快適なヒミツ基地にしてしまうあたり、児童文学として目のつけどころがいいです。さらに蔵には、思わぬものが発掘される空間としての役割も期待できます。今後に向けてまた気になる要素がどんどん増えてきたところですが……、今回もラストの引きで全部もっていくのズルい。