『そんなのうそだ!』(ジーン・メリル)

みんなが額に汗して働いているのに、サルとブタとキツネの三人組はいつも茶店の縁側でくつろいでいました。そして、店に来る旅人にホラ話を聞かせて食べ物をおごってもらっていました。ある日、スポーツカーに乗ったイヌの紳士が現れます。三人組はイヌの豪華な服をだまし取ろうと、ホラ話をして相手に「そんなの、ウソだ!」と言わせたら家来にすることができるという勝負を持ちかけます。
三人組のウソとイヌのウソは、全く性質の異なるものでした。まずサルの語った話は、川の中で巨大な魚を持っていたかなづちで倒し、その場で火であぶって丸焼きにして食べたというものでした。三人組の話には、ナンセンスなウソで聞き手を楽しませようというサービス精神があります。その意味において、三人組がホラ話を聞かせて対価を受けとるという行為にはある程度の正当性が担保されています。
一方イヌのウソは、ココナッツの実から動物が生まれるという発端の奇想にはおもしろみがあるものの、その本質は契約で相手を縛り付けようとする論理ゲームです。イヌは、契約を盾に自分の都合のいい方向に勝負をねじ曲げているのです。つまりこの話は、庶民が金持ちに搾取されるという現実でいくらでも見られる状況を描いているわけで、なかなか皮肉な寓話になっています。