- 作者: 高田由紀子,木村いこ
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2016/09/05
- メディア: 単行本
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美雪はもともと口数の少ない子でしたが、父親と死別してからさらに話さなくなっていました。この作品で描かれているのは、人に沈黙を強いるものとの戦いです。強制される沈黙は日常のなかにも潜んでいますが、そういうものから人を解放するが文学のひとつの役割です。
といっても、作品はそんなにシリアスにはみえません。ふたりの距離が縮まっていくさまが、ユーモラスにゆったりと語られていきます。
山奥の寺、木につるされたブランコ、そこから見える風景。住んでいる人には日常でも、外部の人からはちょっとした非日常に感じられる絶妙な空間が子どもの気持ちを解きほぐしていく場面には、心を揺さぶられます。
清く正しい児童文学のお手本のような作品。とても手慣れた感じがして、これがデビュー作とはちょっと信じがたいです。