『精霊のなみだ』(湯湯)

精霊のなみだ (トゥートゥルとふしぎな友だち)

精霊のなみだ (トゥートゥルとふしぎな友だち)

  • 作者:湯, 湯
  • 発売日: 2020/02/10
  • メディア: 単行本
中国の志怪童話「トゥートゥルとふしぎな友だち」の第3弾。2巻がおとなしめだったので油断してましたが、そもそもこのシリーズは悲劇性が売りでしたね。
今回トゥートゥルが知り合うのは、村中の人々から忌み嫌われている藍ばあさん。藍ばあさんの小屋に落としたたこを取ってもらったことをきっかけに本当はいい人だと知り、藍ばあさんにお話を聞かせてもらうために小屋に入り浸るようになります。
藍ばあさんが語ってくれるのは、百年前にプルル湖という湖に住んでいた水の精の物語でした。そこには10人の水の精が住んでいましたが、水が干上がってしまったためにグディダという水の精ひとりを残してみんな人間の世界に出てしまいました。人の姿になって人間の世界にまぎれこんだ水の精たちは、鋭い歯の痛みに悩まされることになります。歯を抜いてしまえば自分が水の精であったことを忘れてしまいますが、痛みはなくなり永遠の命も手にすることができるので、8人の水の精は歯を抜いてしまいます。残り1名のカーシャだけは、グディダとの再会の約束を守り、孤独と貧しさと歯の痛みに耐え続けていました。トゥートゥルは藍ばあさんこそがカーシャだと気づき、ますます藍ばあさんへの思いを募らせていきます。しかし村人たちは藍ばあさんが子どもをたぶらかしていると思いこんで、小屋から追い出そうとします。
100年も会えなくてもつながり続けるカーシャとグディダの関係の尊さ。そして、100年耐えてやっとできた友だちとも引き離されてしまうという悲劇性。悲しくも美しい運命に読者は感情を激しく揺さぶられるばかりです。
あのラストはハッピーエンドなのか、それとも幸福な結末を幻視しただけなのか。あの光景は現実のものでありますように。