『ロンドン・アイの謎』(シヴォーン・ダウド)

カーネギー賞受賞作『ボグ・チャイルド』やパトリック・ネスが書き継ぎ映画化もされた『怪物はささやく』などで知られるシヴォーン・ダウドの久しぶりの邦訳が登場。シヴォーン・ダウドはわずか2作を発表しただけで2007年に47歳で亡くなり、早世が惜しまれている作家です。2007年刊行のこの『ロンドン・アイの謎』は、生前に発表された貴重な2作のうち最後の作品ということになります。
主人公は12歳の少年テッド。姉のカットといとこのサリムと連れ立って超巨大観覧車ロンドン・アイに行きました。ところが、姉弟とは別のカプセルに乗っていたサリムが行方不明になってしまいました。物語は、テッドが探偵役となってこの謎を探るミステリになります。
観覧車という密室からの人間消失という、シンプルかつ美しい謎でつかみは完璧です。
テッドはトランポリンと気象学が好きな少年で、なんらかの症候群で高機能型のやつだということです。『真夜中の犬に起こった奇妙な事件』(2003年)や「名探偵アガサ&オービル」シリーズ(2005年シリーズ開始)など、当時はASD(であるらしい)子どもが登場する児童向けミステリの波があったようです。
テッドはサリムの消失についていくつかの仮説を立てます。その中には人体の自然発火やタイムワープというのも含まれていますが、これは韜晦でも悪ふざけでもなく、テッドは大真面目に主張しています。
一方、定型の姉はテッドには理解しにくいボディランゲージなどの手がかりを見つけ、謎解きに貢献します。テッドと姉が衝突しながらも足りないものをお互いに補いあって、探偵役として最高のバディとなる過程が見どころです。
テッドの物語には2作目の構想があり、ロビン・スティーヴンスが書き継いで2017年に刊行されました。こちらも邦訳が出る予定だとのことで、楽しみです。