『メイズさんの言うとおり』(小金井ゴル)

第2回ポプラキミノベル小説大賞<ワクワク心がはずむ物語部門>大賞受賞作。新しい中学に転校してきたばかりのルカは、たちの悪い女子グループに絡まれ、『メイズさん』という占い遊びを教えられます。時計を使用した単純な占いで、短針が上向きで零時に近ければ「ハイ」、下向きで6時に近ければ「イイエ」、『ハイは零時で、イイエは六時』というものでした。ルカがテストでこの占いを使ってカンニングしていたことが女子グループにばれ、脅迫を受けるようになります。台湾出身のクール女子ユーシャンがなにかと助けてくれますが、彼女も女子グループににらまれ、ふたりで窮地に陥ります。
夢に出てくるメイズさんの洋風の意匠であったり、ユーシャンまわりであきらかになってくる東洋風のオカルトであったり、あまりなじみのないものが恐怖を演出してくれます。ただし、この作品のうまさは実は、大きくふたつの昔話の類型をたくみに現代のエンタメとして落としこんでいるところにあります。
未来予知の化け物とはすなわち、「さとるの化け物」であると考えると理解しやすくなるでしょう。これの攻略法は「人間は思わぬことをする」ですが、ここに友だちを助けたいという勇気の物語の要素を埋めこんだうえで、子どもの持つ可能性を勝利の鍵としているのが憎いです。児童文学として正しいホラーであるといえそうです。