『クロスオーバー』(クワミ・アレグザンダー)

12歳のジョシュは、将来有望なバスケットボール選手。父も偉大な選手でしたが、具合が悪いのに医者に行きたがらないのが家族の悩みの種でした。また、ジョシュと双子のJBもバスケ選手で同じチームで競いあってきましたが、JBが女子に関心を持ち始めたことから二人の関係がぎくしゃくしていきます。
あらすじは、偉大な父との確執、兄弟との確執というこれだけで説明がすんでしまいます。ただしこれは神話の時代から繰り返されている大テーマですから、ストーリーの簡潔さは内容の薄さを意味しません。
そんな普遍的な物語を、作品は詩形式でのびやかに語っていきます。まず目を引くのは、バスケのシーンのタイポグラフィです。不勉強でスポーツものでタイポグラフィが使われた作品にはいままであまり触れた覚えがないのですが、確かにこの躍動感のある表現はスポーツものでこそ生きてきそうです。
詩形式で小刻みに話を進行できるので、語り手の自虐ギャグを差し挟んだりも自由自在です。まさに表現手法の勝利を目の当たりにすることができます。