第37回福島正実記念SF童話賞受賞作。小学四年生のタクミがフリーマーケットで買ったサンダー仮面の変身ベルトを着けると、本当に変身してしまいました。ヒーローのようにパワーアップしたのはいいものの、問題は変身の解除方法がわからないこと。このままではごはんも食べられないしトイレにも行けないし、生存に関わるレベルで心配なことばかり。解除方法を探そうとタクミは奔走します。
友だちに相談しようとしてもコスプレ不審者だと思われエアガンで撃たれてしまいます。そして、信じてもらうために恥ずかしい秘密を言わなければならないという試練が与えられます。情報を集めに行った友だちを待つあいだ特撮ヒーローの姿で体育座りで待機するという絵ヅラも笑えます。ちょうどよい温度のコメディ色も持たせながら、物語は進んでいきます。
大幅におまけして変身ベルトを売ってくれたフリーマーケットのお兄さんの名前が「ミライハヤト」というできすぎたかっこいい名前なのが効いています。それがヒーローの条件と正しい贈り物の宛先という作品の核につながって、かっちりきれいに物語が収束していきます。