- 作者: 藤野恵美
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2005/05/01
- メディア: 単行本
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一巻の感想でも書いたとおり、とにかく一話一話の内容がものすごく濃いです。第一話「ハリウッド・スクランブル」は往年のハリウッド女優の心の秘密に迫る美談。第二話「狼の首飾り」はドイツの人狼伝説をモチーフにした本格的な密室もの。第三話「盗天龍宝」は怪盗版の死亡遊戯+秀逸な男の友情物語になっていました。この三話はもちろん面白かったのですが、最終話「賢者の石(ラピス・フィロソフォルム)」は前の三話をさらに上回る完成度の高い娯楽小説でした。
洞窟の中で生き続けるオートマタと永久運動機関をテーマとした幻想的な作品で、一級のゴシックホラーです。さらに永久機関に合理的な説明を付けており、ミステリとしても秀逸でした。
第二巻からEX‐GPはトーナメント形式になりました。そして第一巻で登場したライバルキャラ達が謎の少年スマイルに次々と敗退していき、最終話で主人公がスマイルと当たるというお約束の燃え展開を見せます。スマイルはファントムの当面のライバルになりそうで、今後の展開を期待させる引きになっていました。
ライバルの怪盗が続々ファントムの学校に現れるというお約束も面白いです。ファントムにとって大事な日常の学校生活がどんどん怪盗達に浸食されていく、いやいや怪盗をやっているファントムにとってはかわいそうなことになってきました。しかしそれだけに、ファントムにとって日常の象徴である幼なじみの優花の存在がいっそう光ってきます。濃い連中に絡まれていると素朴でやさしいだけの女の子がこんなにも輝いて見えるんですね。ファントムと優花の関係が、とりあえず現時点ではファントムの一方的な片思いだというのもいい感じです。