「怪盗ファントム&ダークネス EX‐GP1」(藤野恵美)

怪盗ファントム&ダークネス EX‐GP1 (カラフル文庫)

怪盗ファントム&ダークネス EX‐GP1 (カラフル文庫)

 なんかそろそろ藤野恵美は天才と言い切っていいような気がしてきた。多くを語る必要はありません。圧倒的に面白いです。
 主人公の有瀬七海は一見普通の小学生ですが実は怪盗ファントムという裏の顔を持っていました。叔父で学校の先生で怪盗の師匠である垣内九曜・怪盗ダークネスに無理矢理怪盗修行をさせられています。このふたりがEX-GP(エクスプローラー・グランプリ)というイベントに参加するのが物語の大筋。EX-GPとは世界的な資産家のゴールドバーグ氏が主催しているイベントで、腕に覚えのある強者達が氏の指定する宝物を探すというもの。優勝者には貴重な景品が与えられます。
 200ページほどの本に4つの短編が入っているのですが、これの濃いこと濃いこと。どの短編も本一冊分の読み応えがあるといっても大袈裟ではありません。ひとつひとつが一流の冒険物語で、ラノベとしてのお約束もこなしつつ小粋な美談にまとめられています。さらに特筆すべきはこの作品が本格ミステリであることでしょう。著者紹介にはのりりんが好きって書いてありますね。藤野恵美にはそっちの素養もあったのか。恐るべき引き出しの多さです。