『シンデレラのおねえさん』(おくはらゆめ)

シンデレラが王子のハートを射止めた後のお話を語った絵童話。ヒマをもてあましたふたりの姉は、シンデレラの悪口を言いつつ将来の不安に襲われていました。

シンデレラのかーちゃん、でーべーそーって、わたくしたちのおかあさまと、同じだったわ。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/shoseki/tobunohon/book-th013

じいを巻きこんで「こんなシンデレラはいやだゲーム」をやっていたところ、おかあさまからシンデレラに嫌がらせをするためにバケツいっぱいに公園の砂場の砂を入れてくるよう命じられます。
ギャグ調で語られるのに姉やおかあさまの悩みは普遍的なものであったり、姉とおかあさまとじいだけ貴族っぽい装いをしているのに周囲はふつうの日本の庶民ワールドのようだったりと、チグハグさがおかしみを生んでいます。
じいが語ったおかあさまの悲しい過去は、劇でおひめさま役をしたかったのに一度も叶えられなかったというものです。その原因のいくつかはおかあさまの能力が高かったことにありました。そこに早く気づいていれば、いじわるな継母になどならなくてすんだのではないでしょうか。
姉に同じ轍を踏ませないように、公園ではかっこいい大人の女性との出会いが用意されていました。ハトにえさやりをしていた近所のおばさんは、選ばれる客体から選ぶ主体になれという最高のアドバイスをくれます。

どくしんも、気楽で楽しいわよ。自分で自分のことをえらぶの。くふふふふ

子どもには幼いうちから、多様なロールモデルを提示しておきたいものです。でも現実ではそうそう都合よくかっこいい大人が現れてくれるわけではないので、こういう作品の存在は重要です。
それにしても、本文では記述されないじいの動きが目を引きます。砂遊びをするために姉が外した手袋をうやうやしく持っていたり、姉が忘れた帽子を無言で拾ったり。細部まで目が離せません。