『木のロボットと丸太のおひめさまのだいぼうけん』(トム・ゴールド)

子宝に恵まれなかった王さまとおきさきさまは、それぞれ女性の発明家と魔女に依頼して子どもを作ってもらいました。爆誕したのは、木のロボットと丸太のおひめさま。丸太のおひめさまには、寝ると丸太に戻ってしまい魔法の呪文をかけてもらわないと人間の姿になれないという秘密がありました。ある朝、木のロボットが妹を起こすのを忘れてしまい、部屋の掃除に入ったメイドさんが丸太をゴミだと思って捨ててしまうという事件が起きます。木のロボットは妹を探すため冒険に出かけます。
想像力をかき立てる仕掛けが随所に施されています。発明家や魔女の仕事部屋には無数の道具があって、どんな役に立つのかと考えさせられます。木のロボットの歯車だらけの内部に虫の家族が住んでいるという細部にも楽しさがあります。冒険のフィールドはレトロRPGのマップ画面のようで、これも想像力を刺激します。冒険中に起こる細かいイベントは、「きょじんの かぎ」「びんに入ったおばあさん」などわずかな言葉とひとつのイラストの列挙のみで語られていて、読者に自分で物語をつくるように促しています。
いまの時代の物語なので、おうじさまがおひめさまを助けるという一方的な関係にはなりません。木のロボットはメンテナンスなしで長期の冒険をしたので、妹を見つけ出したところで力尽き、帰りの旅はおひめさまが主人公になります。でも、子どもだけで冒険を完遂させるのも酷です。クライマックスにはそこから救援が湧いて出るのかという驚きがあり、とんとん拍子にハッピーエンドに向かう心地よさを堪能させてもらえました。