- 作者: 本川達雄,こしだミカ
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2019/05/21
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る
沖縄で海水浴をしているふたりの子どもに〈超人!? ナ・マーコ〉がナマコの生態を解説するという設定になっています。こしだミカの描くナ・マーコのインパクトは相当なもの。バックベアード様みたいなこいつがアップでぬっと顔を出すと、心臓を持っていかれます。
ほぼ皮だけで構成され、中身は腸だけというナマコの体は、生き物は円柱形であるということを強烈に意識させます。そして圧巻なのは、哺乳類とナマコの違いをまとめた表です。「目」「鼻」「口」「心臓」「脳」について、当然哺乳類はすべて持っているわけですが、ナマコは「ないない」「ありません」「なーし」「ないなーい」「ないヨー」となっています。心臓や脳もないとなると、哺乳類の基準で考えれば生きているのかどうかすら判然としません。人とはまったく異なる生き方に引きこまれていきます。
ステータスを守備力と再生能力に全振りして、とにかく食われにくい特性を獲得したナマコ。敵から逃げる必要もないので動く必要もなく、そのため感覚器官も脳も筋肉もなくてよい、理想的な省エネ生活ができるというのがナマコの生き方です。それゆえのナマコ天国というタイトルです。
クライマックスには、本川ファンにはおなじみのおうたの時間も確保されています。慣れていない人は、突如としてページいっぱいに譜面が登場することにも驚かされることでしょう。
砂を食べてりゃ 砂を食べてりゃ
砂を食べてりゃ この世は天国
ナマコ天国 ナマコ天国
ナマコの パラダイス
ただ生物の生態を説明されているだけのはずなのになにかとんでもない危険思想を吹きこまれ洗脳されているのではないかという疑惑を、読者は抱かされることになります。
ところで、ここまで防御力に特化したナマコにも、捕食しようとする敵はいるんですよね。ホモ・サピエンスとかいうやつなんですけど。ナマコ天国を守るために、ホモ・サピエンスは滅ぼすべきでは?