『10分で見ぬけ! 犯人はキミだ!!』(秋木真・あんのまる・遠山彼方・にかいどう青・針とら・吉岡みつる)

6人の著者によるミステリアンソロジーしょっぱなから盛大にネタばらしをしてしまいますが、限られた長さで登場人物もたくさんは出せないなかで犯人当てで読者を驚かせるには、犯人は「キミ」=「私」=「一人称の語り手」にするのが手っ取り早いでしょう。そこで、もっともストレートな「犯人は、わたしだ!」を軽いノリでトップバッターにさせ、その後語り手が秘密を持っているパターンの話をいくつか配置するのは、初心者向けのミステリアンソロジーとしてはくせが強いです。以下、特におもしろかった作品を紹介します。

遠山彼方「私のカレは名探偵」

女子が親友から、おまえの彼氏があたしの好きな先輩を盗んだと訴えられるという、ド修羅場から始まるラブコメミステリ。探偵役の彼氏は推理力はあるけど気弱な不幸体質で、せっかくの推理を聞いてもらえないのがかわいそうで笑えます。そんな彼氏をワクワクキュンキュンで見つめる主人公もくせ者で、愉快なカップルです。

吉岡みつる「カイメイ学園ナゾトキ事件ファイル〜ラブレター編(仮)」

絵に描いたようなお嬢さまが暗号でラブレターを拵えようとする話。双子の従者が下ネタ多めでお嬢さまを煽っていくのが楽しいです。オチもキレがよく、不憫かわいいお嬢さまに笑わせてもらえます。

にかいどう青「健康で文化的なわたしたちの地獄」

で、当たり前のようにトリはにかいどう青。最近の児童向けアンソロジーの編者、トリをにかいどう青にしておけば間違いないと思って楽してませんか? いやでも、実際それが一番安定するんだから、真打ちに任せるしかないようです。
「健康で文化的なわたしたちの地獄」は『ひみつの相関図ノート』所収の「それでも地獄で息をする」の姉妹編で、同じく文芸部員の変人槇村林吾が探偵役を務めています。文化祭準備期間に衣装紛失と人体消失事件が起こります。
明るく楽しい作品ばかりのアンソロジーの締めに、苦みMAX の日常の物語をぶっこんでくれました。このシリーズは、学校は息をするのも困難なほどの地獄であるという事実を残酷に突きつけてきます。そのなかで必死に息をしようともがく生徒たちの姿が美しいです。