その他今月読んだ児童書

片目の青

片目の青

2010年の講談社児童文学新人賞佳作受賞作『草の上で愛を』以来、ひさしぶりのYA作品。短歌や絵本などさまざまな分野で活躍している人ですが、せっかくデビューしたのだからこちらの作品ももっと書いてもらいたいです。「どうせ死ぬ こんなオシャレな雑貨やらインテリアやら永遠めいて」というような短歌もおもしろいですけど。
らくごで笑児科

らくごで笑児科

陣崎草子といえば、このシリーズのイラストも、本文のギャグとうまく調和していておもしろいです。
斉藤洋の落語シリーズ第2弾。病院を舞台にした落語が7編収められています。質にばらつきはありますが、新作落語としてかなりレベルの高い作品もありました。特に第2話の、つきぬけたそこつ夫婦が息子の入院の準備をする話が笑えます。
カラスネコチャック (おはなしメリーゴーラウンド)

カラスネコチャック (おはなしメリーゴーラウンド)

きょうだいのなかで1匹だけ毛が黒かったために母猫の死後居場所を失ってしまった猫が、どうも化け猫になってしまったらしい祖父を捜す旅に出る話。
この作品はとにかく、挿絵が狂っていて怖いです。ひとつのページにタッチの違うイラストを並べてみたり、化け猫の叫び声をその姿にデザインしてみたりと、さまざまな工夫を凝らして不気味さと迫力を演出しています。
アヤカシさん (福音館創作童話シリーズ)

アヤカシさん (福音館創作童話シリーズ)

器物の精霊のような「アヤカシ」を見る能力を持った叔母と甥が、さまざまな事件に巻き込まれる話。たまたま同じ福音館創作童話シリーズで同年に刊行された『どろぼうのどろぼん』と重なるようなテーマになっているので、読み比べてみるのもおもしろいかと思います。主人公の名前が「ケイとメイおばさん」と、『床下の小人たち』から借用したものになっている理由が気になります。頭がよすぎて浮いている転校生と友達になったがために、金魚のふん扱いを受けるようになった女の子の話。頭のよい子と、自分には何の取り柄もないと思っている子、それぞれの孤独の姿と歩み寄りが丁寧に描かれています。