- 作者: 長新太
- 出版社/メーカー: BL出版
- 発売日: 2003/07
- メディア: 単行本
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終盤では闘病体験も描かれており胸が一杯になりますが、やはり目を引くのは絵本に対する熱い思いです。
生真面目というのは困りものだ。良識派を自認しているから、正々堂々としている。児童書の選択なども、コンクリートで出来たようなものばかりえらぶ。たまには悪口も書きたくなるよ。「ナンセンスに感動がありますか?」なんて詰問する。ゴジャリマスヨーダ。
こんな愚問を投げかけられたら腹が立つのは当たり前です。
「いいものが売れなくて、わるいものが売れるんです。そうすると、わるいものがいいものになるんです。」と、ある人が言う。「売れるものが、いい本なんです。絵の質の高さなんて、どうでもいいんです。絵の質が低いほど売れるんです。そういう絵は、親しみがもてる、ということで評価されるんです。ここのところがわからなくてはダメですよ、チョーさん」
「質はともかく、売れるものをつくるのが、いい編集者ですよ。」と、ある編集者が言う。「質はともかく、売れるものを描くのが、いい絵本作家です」と、ある絵本作家が言う。「質なんかわかりません。売れるものを買うのが、わたしたちです。」と、ある母親が言う。
こういう状況は絵本の世界に限ったものではないと思いますが、絵本に限ってはひとつ大きな問題があります。それは、本を選ぶのが子供達自身ではないということでです。くだらない絵本を読まされても、子供に自己責任を問うことは出来ません。責任を問われるのは媒介者である大人、損をするのは子供です。それだけにこの母親の発言には絶望させられてしまいます。
たとえ10部しか本が売れなくても、子どもたちを喜ばせてやろう。やがてその10人の子どもたちは成長して、りっぱな10人の編集者になり、よい絵本をつくるだろう。
まじめなところばかり引用しましたが、一番共感したのは「がんばってください」という子どもの手紙に「でもね、わたしはがんばるのがきらいなのよ。」と答えているところだったりします。