「魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち」(テリー・プラチェット)

魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち

魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち

 あすなろ書房、グッジョブです。「天才ネコモーリスとその仲間たち」に続いて児童向けディスクワールドを出してくれました。この調子でぜひ続編もお願いしたいです。
 話の大筋は9歳の少女ティファニーが小人の集団「ナック・マック・フィーグルズ」を従えて魔物にさらわれた弟を助けに行くものということになります。しかし特筆すべきはティファニーのキャラクターの濃さです。非常に頭のいい子で、誰も止めなかったからという理由で辞書をまるまる一冊読破してしまった武勇伝の持ち主。第一章で彼女はいきなり怪物と遭遇しますが、弟をおとりにして怪物をフライパンでぶっ飛ばして見せ、強烈な存在感を印象づけます。
 この濃いキャラクターを主人公にプラチェット一流のユーモラスな冒険物語が語られるのだから面白くならないわけがありません。
 序盤で笑わせてもらったのは、この世界での教師の扱いです。教師は一種の旅芸人のような扱いで、ものを考えるようになってしまった子供に知識を授け、おとなしくさせるのが彼らの仕事です。教師の世話になると子供がうるさく質問をしなくなるので重宝されていますが、「ニワトリを盗まれてはかなわない」というので日が暮れる前には村から追い出されてしまいます。教師はそれぞれ小屋を構えて客引きをします。例えば歴史の教師は「歴代の王様の死にざまを知りたくないかね?血まみれで、すごくためになるぞ!」といった具合で子供を誘います。生身の教師がどうがんばっても聖職者にはなれないんだから、こういう扱いもありなのではと思ってしまいました。
 さて、ティファニーは非常に魅力的な少女なのですが、その個性のつよさゆえに困難にぶち当たってしまうこともあります。この作品は彼女のように理屈バカで自我の強い子供がつぶされないようにサバイバルしていく物語として読むと非常に感動的で、クライマックスで彼女がラスボスと問答する場面では思わず手に汗を握ってしまいました。
 プラチェットはすでに二年後のティファニーを主人公とした物語を発表しているそうです。こちらも早急に日本語版を出してもらいたいと思います。