『マリア探偵社 暴走ピエロ』(川北亮司)

マリア探偵社 (22) 暴走ピエロ (フォア文庫)

マリア探偵社 (22) 暴走ピエロ (フォア文庫)

大人の事情で続刊が途絶していた『マリア探偵社』の新作が、版元を岩崎書店に移して刊行されました(前にも同じようなことを書いたような気がする……!)。めでたくこの素晴らしいシリーズが再開されたので、今回はあらためて『マリア探偵社』の魅力を確認しようと思います。
このシリーズのよさは、マンネリズムが理想的に機能している点にあります。「『マリ探』はこうでなくっちゃ!」という読者の期待を裏切ることは決してありません。
探偵役のカオリンは頭脳と演技力で軽く大人をあしらい、将道はとりあえず女装する。大人はおばかばっかりで、探偵社社長の亀代は金に目が眩んでろくでもないことをし、警官の赤馬も毎回余計なことをして事態を混迷させる。でも、どんなに不可解で恐ろしい事件が起きても、カオリンがペロキャンなめたら事件は解決だから安心だね!……と、完成されたお約束の中で毎回バラエティに富んだ事件を提出するのですから、面白くならないはずがありません。
しかし、このシリーズは楽しいだけではありません。カオリンが大人や社会に向ける乾いた視線にも注目する必要があります。社会の不条理に対して子供の立場から激しい異議申し立てをしています。エンタメとしての完成度の高さと社会問題に対する意識の高さの両面において『ズッコケ三人組』シリーズの後継となりうる作品があるとしたら、それはこの『マリア探偵社』ではないかと思います。
結論:『マリア探偵社』は少なくとも50巻は続けるべき。