『黒いお姫さま』(ヴィルヘルム・ブッシュ採話)

黒いお姫さま―ドイツの昔話 (世界傑作童話シリーズ)

黒いお姫さま―ドイツの昔話 (世界傑作童話シリーズ)

黒いお姫さま (福音館文庫 昔話)

黒いお姫さま (福音館文庫 昔話)

ドイツの絵物語作家ヴィルヘルム・ブッシュ(1832〜1908)が採集した昔話集。福音館書店から1991年に刊行されたものが、佐々木マキのイラストそのままで福音館文庫に収録されました。
悪いやつは最終的に「四頭の牛にひきさか」れてしまうような、昔話らしいスプラッタな物語が多数収められています。
なかでも怖いのが、表題作の「黒いお姫さま」。死んで体が黒くなったお姫さまが、夜な夜な棺から起き上がって番人をくびり殺し、教会の地下に死体の山を築き上げるというお話です。番人になった羊飼いは死体の山に逃げ込んで血にまみれながら隠れますが、お姫さまは「足があたたかいのがそうよ!」と叫んでひとつひとつ死体の温度を確認していきます。あ、このパターンの怪談、日本だけ(日本のは足が冷たいのを探す方ですが)じゃなかったんですね。

その夜、教会の鐘がちょうど十二打ったときです。お棺のふたがあいて、なかから、お姫さまがすうっと出てきました。お姫さまは番人をつかんで首をぐいとひねると、教会の地下にある穴ぐらへほうりこみました。そして、鐘が一時を打つと、またお棺のなかへ、はいっていきました。

上田真而子の品のある訳で、怖さがいちだんと引き立ってきます。「首をぐいとひねる」というような優雅でシンプルな表現のおそろしいことおそろしいこと。
すっとぼけていらがらスタイリッシュな佐々木マキのイラストも、恐怖に華を添えています。