『南極の冒険』(マージェリー・シャープ)

南極の冒険 (ミス・ビアンカ シリーズ 6)

南極の冒険 (ミス・ビアンカ シリーズ 6)

ミス・ビアンカバーナードは、ついに囚人友の会を引退します。そんなとき、心身ともに衰えを感じ隠居しようとしていたふたりの心に再び炎をともすために、あの男が帰ってきます。そう、最初の冒険の仲間だったノルウェーのあらくれ船乗りねずみニルスが再登場するのです。ニルスは、以前助けたノルウェーの詩人が南極探検に行ってひとり取り残されたとの情報を携えてやってきます。
ニルスの登場するタイミングの絶妙なこと。いろいろあったらしく、片足が義足になった姿で現れたニルスは、自分は同行しようとせずふたりきりの引退旅行に送り出します。さっと現れてさっと引くところが彼らしくかっこいいです。
南極に着くと詩人はあっさりと助け出されて、かわりにミス・ビアンカバーナードが取り残されてしまいます。歴戦の勇士のふたりが今度は救助を待つ側にまわってしまうという運命の皮肉。今度のふたりの戦いは、自身の老いとの戦いでもあったのです。
それでもミス・ビアンカは、一層磨きがかかった老獪な交渉術で北極グマ(!)やペンギンをたぶらかし、難局を乗り越えます。しかし、我らがバーナードはというと……

これまで二ひきが共にした、すべての救出行で、バーナードが、折れたマッチ棒ほどにも、ミス・ビアンカの助けにならなかったのは、これが、はじめてでした。
(p175)

バーナードは、不憫であればあるほど輝きますね。