『14歳』(小林深雪/他)

14歳 1 (ビッグコミックス)

14歳 1 (ビッグコミックス)

じゃなくて、
YA! アンソロジー 14歳 (YA! ENTERTAINMENT)

YA! アンソロジー 14歳 (YA! ENTERTAINMENT)

〈YA! アンソロジー〉の新刊。特におもしろかった作品をいくつか紹介します。

「つくし薬局のカレーパン」安田夏菜

歴史ある女子校の園芸部の生徒が地面を掘り起こしていたところ、何十年も熟成された黒歴史を発掘してしまいます。それは肝油ドロップの箱に入った、サナトリウムに入院することになったお姉さまにあてたラブレター。エス小説ワールドが現代によみがえります。
現代で起こる事件も、学園の王子さまが零落するという、ベタといえばベタな物語です。しかし、この時代を越えたふたつの虚構のあわいには、吉屋信子が仕込んだ真実の毒が継承されています。すなわち、同性愛は異性愛の代わりではないということ。ここをはっきりと明言して政治的正しさを確保していることが、この作品の成果です。

「ぼくと師匠の夏」如月かずさ

厳しい受験勉強に倦んでいた少年が、神社でジャグリングをしているお姉さんと出会う話。子どもを新しい世界に導き、自由をもたらしてくれるものはなんなのか、それは「勉強」にほかなりません。あまりに当たり前すぎておおっぴらに語りにくいことをきちんと語ってみせた誠実さに好感が持てます。