- 作者: 長新太
- 出版社/メーカー: ブックローン出版
- 発売日: 1994/03
- メディア: 大型本
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ほかの長新太作品ではめったに見られない過激な発言が目立ちます。低俗な絵本を出す作家や編集に厳しい批判を浴びせ、他の絵描き業に比べて絵本のギャラが低いことに愚痴をこぼす。読んでいる方がそこまでぶっちゃけていいのか心配になるくらいです。しかしいくら厳しいことをいってもユーモアをわすれないところに長新太の心意気を感じます。
「チョーさんは、編集者は絵がわからないバカなヤツ、と思ってるでしょ?ええ、ソーデスヨ、ソーデスヨ。ゲージツなんて、どうでもいいやい!そんな絵本は売れないんだから。カワユーイ、アマーイ、なめたくなるような絵が一番いいのだ!そういったセンセイがたの絵本が売れて、もうかっているからチョーさんみたいな人の絵本もわが社から出せるのよ。ありがたいと思いなさい。コラッ。こちらいいるセンセイは(注・女の人)売れる絵を描くセンセイです。チョーさん、最敬礼しなさい。」
酒に酔った編集者が長新太に向かってのたまったセリフだということです。暗澹とした気分になります。
なにかというと「わたしはワカリマセーン」と逃げる。例えば「ナンセンスはワカリマセーン」と言ってニヤニヤする。なんという卑屈。ナンセンスがわからないのを自慢しているのか、バーカ!などとここで書いてはいけない。いつもこういうことを書いていると、みんなに毛ぎらいされて、しまいにはそばにスズメだけしかいない、といった状況になるであろう。スズメにきらわれたら、死ぬしかないのだ。
長新太がここまで激しい罵倒語を使うなんて意外です。前半の威勢の良さと後半の卑屈さとの落差が泣かせます。イラストに首つりの図を使う徹底っぷりがまた泣かせます。
子どもの絵の審査をした。いつも脳天に一撃をくらったようなめにあう。子どもには到底かなわぬ。子どもの本の絵を描いていて、いいのでございましょうか?子どもに見せる本を描いているのなんて、実は、たいへんゴーマンなことではないのかしら?と、いつも思う。子どもの絵を見て激しい嫉妬に悶々とした1日。
しかしいくら厳しい状況にあっても、誰よりも絵に対する真摯な姿勢を持ち続けたからこそ、長新太は名実ともに日本を代表する絵本作家になりえたのだと思います。彼の志が若い作家に受け継がれることを願ってやみません。