「両親をしつけよう」(ピート・ジョンソン)

両親をしつけよう! (文研じゅべにーる)

両親をしつけよう! (文研じゅべにーる)

 ルーイの一家が引っ越してきた町は、とんでもない「ガリ勉村」でした。放課後になると子供たちはせかせか帰っていって、習い事に精を出します。いままで勉強のことで口うるさくいうのなかったルーイの両親も、周囲に感化されて習い事をしろだの家庭教師をつけるだのくだらないことを口走るようになります。ルーイの夢はお笑い芸人になることですが、せっかくオーディションのチャンスがあるのに両親に反対されてしまいます。ルーイはマネージャー役をかってでた少女マディと協力してひそかにオーディションに挑戦します。
 親が急に極端な考えに入れ込んでしまうことは、子供にとっては不条理な恐怖です。突然両親が宇宙人と入れ替わってしまったように感じても、決して誇張とはいえないでしょう。ですからこの作品は芸人志望の少年のユーモラスな語りがなされているにもかかわらず、不気味さや心細さが全編に漂っています。だからこそ、子供が親をしつけるという逆転の発想を持ってきたところが面白いです。子供のたくましさに対する作者の信頼が感じられます。
 お話は王道のサクセスストーリー、友情物語になっており、さくさく読めます。まあまあの良作です。