「プールにすむ河童の謎」(緑川聖司)

プールにすむ河童の謎―緑川事件簿 (ミステリー・BOOKS)

プールにすむ河童の謎―緑川事件簿 (ミステリー・BOOKS)

 一部図書館愛好家の間で話題の緑川聖司の第2作目です。緑川市長、緑川新聞、緑川事件簿、緑川書店、そして緑川図書館。緑川町という好き放題な箱庭を作ってくれました。
 主人公は小学5年生の恭子。新聞部に所属していて、町の事件を扱う緑川事件簿という記事を担当しています。恭子の父親は記者で、警察にも知り合いがいます。ご都合主義ですが、児童向けミステリとして子供が事件に首をつっこめる舞台設定は整えています。
 探偵役はアメリカ帰りの少年相馬。名探偵登場の場面が図書館だというのがいかにも緑川聖司です。期待を裏切りません。で、図書館のミステリ本に答えを書き込むという神をもおそれぬ大犯罪に挑んでいます。図書館の予算には限りがあって、いたずらされた本を買い直すと他の本が一冊買えなくなる。考えてみれば当たり前のことなんですが、いたずらする当人はそんなこと思いもしないんだろうなあ。
 小学校のプールで河童(!)が目撃された事件と、近所で起きた宝石店強盗が絡んで物語が進みます。このレベルの謎解きがあって、図書館問題を必ず入れてくれるなら、わたしは熱烈に緑川聖司をひいきします。とりあえずこの「緑川事件簿」シリーズを年1ペースくらいで出してもらって、できればもっと長い作品も書いてもらいたいですね。