「七時間目の怪談授業」(藤野恵美)

七時間目の怪談授業 (講談社青い鳥文庫)

七時間目の怪談授業 (講談社青い鳥文庫)

 はるかは呪いのメールが届いた携帯を先生に没収されてしまいます。九日以内に同じ文面のメールを3通送らないと呪われるというもの。先生にわけを話すと、自分に霊の存在を納得させられる怪談をしたら携帯を返すと言われます。こうして放課後の怪談授業がはじまりました。
 先生は生徒に怪談を語らせることによって、怪奇現象の存在をことごとく否定し、「こわい」とはなんなのかを考えさせます。これはすばらしい科学リテラシーの教科書になっています。説教が先行しているので、訓導的で古めかしくは感じてしまいます。わたしも子供が大人の手の上で踊らされるだけの話はあまり好きではありません。でも、この作品は評価したい。子供に媚びず、幽霊などいないことを合理的に説く大人は必要です。
 登場する怪談は「牛の首」から「棒の手紙」まで網羅的です。怪談集としても充分楽しめる内容です。

あとがきより

 作者がこのような作品を書いた動機はあとがきで明かされています。作者の祖母が、作者の病気を心配するあまり、霊感商法に引っかかってしまったことがあったそうです。この経験のおかげで藤野恵美は心霊現象を否定するようになりました。
 さらに祖母をめぐるエピソードは続きます。藤野恵美は生前の祖母に、こんなことを言っていました。

「人って死んだらどうなるんだろう?霊界ってあるんかなあ?もし、幽霊になれたら、お葬式で心霊現象を起こして知らせてな。」

 当然心霊現象など起きなかったそうです。
 ちょっと待て。どこかで聞いたような話じゃないですか。某有名作品のラストをひっくり返したような……。これはもしや「○の○○が死んだ」批判?藤野恵美にその意図があるかどうかはわかりませんけど。