「ファンタージエン 秘密の図書館」(ラルフ・イーザウ)

ファンタージエン 秘密の図書館

ファンタージエン 秘密の図書館

 現代の作家が「はてしない物語」のオマージュを書くという企画ものです。
 導入は非常におもしろそうでした。若き日のカール・コンラート・コレアンダー氏が古本屋の面接を受けるところから物語がはじまります。その本屋には隠された書庫があり、広大なファンタージエン図書館につながっています。そこでは本が消失し、虚無だけが残るという事件が起こっていました。古本屋の主人トルッツ氏はカールにサインのない全権委任状を託して失踪してしまいます。途方に暮れるカールですが、ファンタージエン図書館を守るために立ち上がることを決意します。
 レプリカのフッフールや黒のエルフェンバイン塔といったエンデのファンなら燃えざるを得ないワードもたくさん出てきて、ものすごくおもしろそうだったんですけど……。いまいち盛り上がり切れませんでした。
 思うに、24歳のカール青年のダメさが、バスチアンのダメさとほとんど同じだというのに無理があるのではないでしょうか。別に24歳で彼くらいのダメ人間がいても構いません。でもこの場合、どうしてもバスチアンと比較されてしまいます。それでいい大人がバスチアンと同じことをしていたら、違和感をもたれても仕方がありません。
 ひいたのが、ガールフレンドがいるのかと聞かれたカールが、「隣のうちに小さな女の子がいて、ときどきその子に物語を読んであげるんだ」と答えた場面です。もちろんバスチアンとクレスタの関係をなぞっているのでしょう。でも、はたちを超えた青年にガールフレンドの存在を聞くということは、当然性的な意味が含まれているはずです。それに対して年端もいかない少女を思い浮かべるというのは危ないです。もしカール青年が、質問のニュアンスを読み取れないほどおくてだったとしても、それはそれで問題です。
 全体としては、「二次創作としてはよくできているがそれ以上ではない」というのが私の評価です。いや、サイーデが幼ごころの君の姉だとかオフィシャルにない設定を勝手に作っているので、二次創作としても問題ありか。