「そばかす先生のふしぎな学校」(ヤン・ブジェフバ)

そばかす先生のふしぎな学校

そばかす先生のふしぎな学校

 復刊ドットコムの交渉により学研から復刊しました。本の帯が復刊ドットコムに寄せられたコメントでみっしりと埋められています。熱気がこもっていていい感じです。
 クレスク先生の学校は、名前がAではじまる男の子しか通うことができません。クレスク先生はそばかすをコレクションしたり、ほっぺをふくらませて空をとんだり、ゆかいで謎の多い先生です。学校には人語を解するムクドリ、マテウシが住んでいます。このマテウシ、実は魔法にかけられた王子だったりします。学校にはどうわの国につながる扉があり、いろんなどうわの登場人物と遊ぶことができます。奇想天外な舞台で、予想もつかない物語が繰り広げられます。解説は不要、とにかくおもしろいです。
 特筆すべきは終盤の超展開です。アイロジーという厄介な転校生が現れたりして、この愉快な学校がやがて終末を迎えてしまうことが示唆されます。しかしアイロジーなど所詮駒でしかありません。物語というものはもっと救いようのないものによって破局を迎えるものなのです。
 最終章「お話よ、さようなら」はたった7ページですが、その怒濤の展開に読者はあっけにとられて見守ることしかできません。登場人物たちはまるでそれが義務であるかのように粛々と伏線を回収し、物語を収束させます。あれよあれよといううちにたたまれる風呂敷。そして最後に正体を見せる「犯人」……。最後の1行を読み終わった時は茫然自失でした。いや、ひょっとするとこれは、読み終わった瞬間に壁に投げつけるのが正しいたぐいの本なのかもしれません。
 まあ、こういうオチを思いつくだけならそう難しいことではありません。でも、このオチを読者に納得させるには、それまでの物語がおもしろくなければなりません。本作はその条件を十分に満たしています。いや、おそろしい。小学生のうちに読みたかったなあ。
 ところで訳者あとがきによると、この本はシリーズ三作出ているうちの一作目なのだそうです。ええー、あんな終わり方をしておいて、どうやってシリーズを再開したんだ?現状では二作目以降は未訳です。できることなら未訳の分も新たに訳してもらいたいです。復刊ドットコム様、学研様、もうひとがんばりできないでしょうか?