- 作者: 梨屋アリエ
- 出版社/メーカー: 金の星社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本
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梨屋アリエ作品の特長は、一人称語りにもかかわらず主人公を突き放していることだと思います。主人公自身が思っているよりも主人公がおバカなことが読者にわかるように語られています。この話の主人公の初音は、親友だと思っていた封子に邪険にされたことで落ち込んでいました。封子は不登校児で、初音は封子のことをかばっていたつもりだったのですが、封子はそう思っていなかったようで、初音に一言の相談もなく転校してしまうことになります。そこで思い出したのが泣き虫の美凪。あの夏の日、いとこたちにいじめられていた美凪を初音はいつもかばってました。つまり初音という子は、他人のために何かしている自分にしか存在意義を感じられない勘違い野郎だったわけです。美凪とのやりとりで初音はそのことを悟ったように見えますが、実は行動をみると全然変わっていません。やっぱり頑張るのは美凪のためでしかありませんでした。物語は中学生なりのノスタルジーと愉快な人々との交流に彩られてさわやかに綴られますが、初音は成長しないまま終わってしまいます。
この登場人物に対する悪意が梨屋アリエの魅力です。それは単なる悪意ではなくて、現実なんてこんなものだと割り切る潔さに裏付けられているのだと思います。