「本よみキッズの事件簿」

本よみキッズの事件簿―子どもと本と、ときどき大人

本よみキッズの事件簿―子どもと本と、ときどき大人

 小学校教諭や司書教諭など子供と本に関わる4人の著者が「子どもと本が出会うときに生まれたドラマ」を綴ったドキュメンタリーです。
 冒頭では優等生だけど裏で陰湿な手段で学級を支配している小五の女子が、川北亮司の「マリア探偵社」に感化されて変わっていくエピソードが紹介されています。本の影響力は侮れません。
 この本の素晴らしい点は、著者が「いわゆる『良書』でない本も好きだった」自分たちの子供時代を肯定しているところです。そのため、現在子供に支持されている「いわゆる『良書』でない本」の「デルトラ・クエスト」を巡るエピソードでは、このような子供の立場に寄り添った見解が見られます。

子どもが読んで楽しんだ本を大人が勝手に、「そんなつまらない本」とか「読むに値しない本」とか「せっかく読むなら……」と言うことは、その本を読んでいた子どもそのものを否定してしまうことになってしまいかねません。「おすすめの本」を紹介しても、表紙だけ見て手に取らない子たちに、「読んでみたら面白いのに……」と何度も感じていた私と同じ思いを、子どもだって抱いていたのではないでしょうか。(p216)

 本を外見で判断するのは子供も大人もお互い様。これは子供と本に関わる全ての大人が忘れてはならない視点だと思います。