「ビッグバンのてんじくネズミ」(石井睦美)

ビッグバンのてんじくネズミ (おはなしメリーゴーランド)

ビッグバンのてんじくネズミ (おはなしメリーゴーランド)

 自転車をおり、てごろな大きさの石に腰をおろす。そんなとき、ぼくは、自分がまだ小四のほんのガキだということをほとんどわすれている。

 小学四年生の橋本祐一は、普通に友達と遊ぶ「健全な小学生」でしたが、徐々に自分がひとりで自転車をこいだり本を読んだりすることが好きな人間であることに気付いていき、今まで親しくしていた友達と次第に疎遠になっていきました。そんなときに彼は河川敷で近所から変人扱いされているおじいさんと親しくなります。そしておじいさんからビッグバンから来たてんじくネズミの話を聞かされます。
 物語は主人公と孤独の出会いから始まります。世間的には「健全な小学生」は孤独を好んだりしないことになっているので、主人公が自ら進んで孤独を志向するという設定だけで充分刺激的です。
 「むなしさ」という高度に哲学的な問題を、不思議なてんじくネズミと出会ったおじいさんの昔語りの形式で語りかける手法もあざやか。難解だからこそ子供が喜んで読める作品になっています。