「ハンナ さかさま川の水2」(ジャン=クロード・ムルルヴァ)

ハンナ―さかさま川の水〈2〉 (世界傑作童話シリーズ)

ハンナ―さかさま川の水〈2〉 (世界傑作童話シリーズ)

 「さかさま川の水」二部作の第二部です。第一部は少年トメックの物語でしたが、第二部の語り手は少女ハンナ。彼女の生い立ち、トメックと出会うまでの冒険、そして出会ってからのトメックの知らない冒険が語られます。
 ハンナの父親は娘が生まれた喜びのあまり精神を病んでしまいました。ハンナがねだったハタオリドリを飼うために全財産と家族を失い、やがて死んでしまいます。残されたハンナは形見のハタオリドリを死なせないためにクジャー川の水を求めて旅立ちました。
 第一部と同様に、ハンナの旅も奇矯な人物との出会いに満ちていました。旅の始まりは死にに行くために故郷を目指す老人に同行し、砂漠ではほとんど口をきくことのないだんまりさんたちを道連れとしました。
 しかし、この物語の登場人物で一番変わっているのはハンナです。いつも微熱があるように情熱的で過剰な行動力を持っている彼女は、父親と同じく狂気の領域に片足をつっこんでいます。このあやうさがハンナを輝かせています。