- 作者: 芝田勝茂,小松良佳
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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「わたしはね」と虫めずる姫はいいました。「ちゃんと頭を使って、わたしにふりかかることはなんであれ、にげないで立ち向かうつもりよ。そういう生き方をしたいからに決まってるでしょ」(p64)
加茂の斎院に奪われた法隆寺の秘宝金剛虫を取り戻すように依頼された虫めずる姫。女童に化けて敵陣に潜入し、斎院の周辺をかぎまわります。
高校時代、古典の時間はあまり好きではなかったのですが、「堤中納言物語」には初めておもしろい小説を読んだなあという感想を持ちました。作品世界で生き生きと活躍する人々が非常に近代的に見えたからなのでしょう。とりわけ印象に残っているのはやはり「虫めづる姫君」です。いい年になっても化粧もしないで、虫を愛でて暮らす姫君。虫といっても蝶のようなかわいいものではなく、主に毛虫です。人の目を気にせず、自分が好きなものをただ愛する彼女の姿は、まさに自由の象徴です。芝田勝茂版の「虫めづる姫君」でも、彼女の自由な生き方が前面に押し出されていて、実に爽快な物語になっています。
ところが困ったことに自由なのは姫だけではありませんでした。ストーリー展開の方もとことん自由で、これがつきぬけていておもしろい。
(以下ネタバレ)
終盤は人々の妄想が煮詰められて、ラストバトルは「怪獣島の決闘」。最後に姫はいかにもいいことをしたような顔をしながらちゃっかり金剛虫を自分のコレクションに加え、黒い一面も見せてくれます。
ここまで好き放題やったのだから、これで終わらせるのはもったいないです。ぜひシリーズ化してもらわねば。