「ゼロ年代ファンタジー児童文学10選」の評判がよかったので、調子に乗って第2弾を行います。今度はゼロ年代のSF児童文学を振り返ります。なお、SFの定義は広めに解釈していますので、「これはSFではない」という抗議はご勘弁ください。
相も変わらず児童文学界ではSFは売れないと言われ続けています。それを象徴するのが、岩崎書店から2003年に刊行された「冒険ファンタジー名作選」という叢書です。「ロスト・ワールド」(ドイル)「火星のプリンセス」(バローズ)「いきている首」(ベリヤーエフ)と、ラインアップをみれば明らかにSFの叢書です。ですが、SFという言葉を入れると売れないという判断がはたらいてこのタイトルになったものと思われます。
しかし、よくみればおもしろい作品はあります。ゼロ年代のSF児童文学界では、国土社の「創作子どもSF全集」など復刊作品が話題になりました。また、老舗の児童書出版社福音館書店が新SFレーベルを立ち上げたり、児童書業界に新規参入した角川書店がSFを強力にプッシュしたりと、明るい出来事がありました。この流れでSF児童文学が盛り上がってくれればと思います。
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/11/21
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ぼくのプリンときみのチョコ (YA! ENTERTAINMENT)
- 作者: 後藤みわこ,亜沙美
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- 作者: 令丈ヒロ子,結布
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「メニメニハート」では心が部分的に徐々に入れ替わっていくというこれまた奇抜な設定で、心と身体という難しいテーマに果敢に挑みました。
- 作者: 梶尾真治,鶴田謙二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/07/15
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- 作者: みおちづる,永盛綾子
- 出版社/メーカー: 童心社
- 発売日: 2001/09
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中世を舞台に正義の海賊団が人助けをする話かと思いきや、一巻の中盤で実は船長のユーリが未来人であったという驚愕の事実が明らかになります。彼女は未来世界で時空石というテクノロジーの結晶を発明したのですが、その力が暴走してしまい未来世界は壊滅状態に陥っていました。ユーリは未来の悲劇を回避する方法を探すために過去の世界をさまよっていたのです。
海賊団は各巻でさまざまな珍しい土地を探検することになるので、秘境冒険小説としても楽しめる趣向になっています。おそらくゼロ年代で小学生にもっとも読まれたSFはこれだと思われます。
NO.6〔ナンバーシックス〕#1 (YA! ENTERTAINMENT)
- 作者: あさのあつこ,影山徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/10/10
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C&Y 地球最強姉妹キャンディ 大怪盗をやっつけろ! (カドカワ銀のさじシリーズ)
- 作者: 山本弘,橋本晋
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- 作者: 川端裕人
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- 作者: 藤野千夜
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藤野千夜が芥川賞受賞の後に初めて出した単行本です。児童書専門の出版社が芥川賞をとったばかりの作家をつかまえて、しかもSFを書かせたというのは、なかなか珍しい出来事だったのではないでしょうか。
- 作者: 蘇部健一,羽住都
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/07/14
- メディア: 単行本
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ところで、自分で作っていてなんですが、このランキングには大きな欠点があります。10選の半分以上が一社の作品で占められているということです。われながら観測範囲が狭いです。ゼロ年代に頑張ってSFを出していた出版社が講談社だけだったというのは考えにくいので、このほかにおもしろい作品をご存じの方がいらっしゃいましたらぜひご教示願いたいです。