「クレヨン王国の四土神」(福永令三)

クレヨン王国の四土神 (講談社青い鳥文庫)
クレヨン王国の四土神 (講談社青い鳥文庫)」(福永令三

なぜ留守番ロボットなのか?

 最大の問題はこれです。まずロボ萌えにまで対応できる福永令三の懐の深さには恐れ入ります。それにしてもなぜ留守番ロボット?
 「月のたまごPART8」ではナルマニマニのエピソードはきれいに終わっていたはずです。それなのにこのジジイときたら、亡くなった初恋の人グルーニカにそっくりなロボットを開発するという、もっともダメな方向に進んでしまいます。ハルボちゃんをつくり、「四土神」ではついに最高傑作アクーリカを誕生させます。草葉の陰のグルーニカはどんな思いで彼を見ていることでしょう。それより、アンナ姉さんのはらわたは煮えくりかえっているはずです。
 で、ハルボちゃんやアクーリカは留守番ロボットとして開発されたわけです。しかし実態は恐ろしい戦闘兵器です。そんなものが必要とされるほどクレヨン王国の治安は悪いのか?いや、初恋の人の姿をした兵器を作るっていうのはどこをどう倒錯させたらできるんだ?さらにそのロボに惚れる豚(ストンストン)まで現れる始末。クレヨン王国の風紀は乱れきっています。

腐敗するクレヨン王国の政治

 ナルマニマニに続いて、クレヨン王国の二大老害の片割れカメレオン総理の話題です。邪魔者の四土神は人工衛星に乗せて宇宙に放り出してしまおうという乱暴きわまりない計画を立てます。そしてナルマニマニがそれを妨害し、アクーリカの中に四土神を隠してしまいます。この二人も考えてみればいろいろあったんでしょうね。それぞれクレヨン王国で文系と理系の頂点に登り詰めた二人です。お互いの実力を認めながらも、ねたみそねみうらみつらみもあったのでしょう。人間くささを感じさせてくれるエピソードです。
 結局カメレオンの失敗のせいで、クレヨン王国に再び奇病が蔓延し、雲影刑務所では集団脱走事件まで起こります。ますます混乱するクレヨン王国。こんなところで月のたまご続編が開幕しました。どこが「月のたまご」なのかは全くわかりません。考えてみればPART2からPART8までも月のたまごは全然関係ありませんでした。それが完結編になってようやく思い出したように出てくることになります。それに、「月のたまご」以降のクレヨン王国は「月のたまご」のキャラクターばかりが出るようになってしまい、すべて「月のたまご」の続編といってしまうこともできます。なぜ「月のたまご」なのかは真剣に検証しなければならない課題だと思います。