「子どもの本―この1年を振り返って (2004年)」

子どもの本―この1年を振り返って〈2004年〉
子どもの本―この1年を振り返って〈2004年〉
 一年の概観も大切ですが、わたしの目的はひこ・田中の辛口評論を見ることです。ハリーポッターに対する見方が非常に辛辣でした。なぜ最近のハリーは見ていていらつくのか。この問いに対してハリーの精神年齢が一巻当時の年齢のままで止まっているからだと明快に答えてくれます。それはすなわち、クレヨンしんちゃんが15才になっても「ぞうさん」をやっているようなものだと。皮肉のきいた例えで笑わせてくれます。
 宮崎駿の「ハウル」についても辛辣です。ソフィーは老婆と少女を同時にこなさなくてはならない技術が要求される役なんだから、ちゃんと声優を使えと。的確な提言です。
 「ハウル」と「ドラクエ8」から、最近人気のある物語の傾向を読み解いています。成長物語ではなくて、「呪われたから元に戻す」という話が受けているらしいです。「成長」というのも信じられませんが、その「元」とやらの方がもっとうさんくさいとわたしは思います。「元」というのに価値があるとすれば、呪われない限り我々は何もしなくていいわけですから、非常に楽な考え方ではありますけど。
 ところで、令丈ヒロ子山中恒の弟子であることをこのひこ・田中の評論ではじめて知りました。令丈ヒロ子に対する好感度が大幅にあがりました。「若おかみ」読んでみようかな。あの表紙を手にとるのはかなり恥ずかしいんですけど。