「やくそくはやくそく」(小沢正)

やくそくはやくそく (フレーベル幼年どうわ文庫 19)

やくそくはやくそく (フレーベル幼年どうわ文庫 19)

 動物と人間の戦争のあと、奇跡的な復興を遂げたアニマン市。そこに大きなカエルが訪れ、市長との面会を求めます。カエルがいうには、この市は自分が魔法で作ったもので、その代償として前の市長と約束した金を払えということです。
 後書きで作者がストレートに語っていますが、この作品は第二次大戦の焼け跡体験が元になっています。あの荒廃した国土がすっかり都会になったことが信じられない思い。「もしかして騙されているんじゃないか?」という感覚がこの世代にはあるようです。小沢正の現実がもろくぐずれ去っていくような物語世界が生まれた原因のひとつに、こういう戦争体験のトラウマがあるのかもしれません。